2019年11月の注目ディール<ZホールディングスとLINEが経営統合に関する基本合意書を締結>
2019年11月18日、ヤフーの親会社であるZホールディングスとLINEは経営統合についての基本合意書を締結した旨発表しました。経営統合により、ZホールディングスはヤフーとLINEを完全子会社として傘下に収めます。本件のストラクチャーには、TOB、会社分割、株式交換が含まれており、全体としてとても複雑な取引となっています。最終合意前の段階であるため、本件では詳細まで明らかになっていない部分もありますが、注目すべきディールとして論点を整理しました。
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2019年10月の注目ディール<コシダカホールディングスが本邦初のスピンオフを実施>
10月10日、コシダカホールディングスは、スピンオフにより、女性専用フィットネスを展開するカーブス事業を分離・独立させる旨、発表しました。スピンオフとは、子会社または特定の事業を独立会社として切り出し、当該独立会社の株式を元の会社の株主に交付するストラクチャーです。2017年の税制改正により譲渡損益や配当に対する課税の繰り延べが可能となっており、また、2018年の改正産業力強化法により会社法の手続きの特例が設けられて使い勝手のよい手法となっていましたが、これまでに実績がありませんでした。本件が実現すれば、本邦初の事例となります。
本件ではスピンアウトされるカーブス事業の売上高がコシダカホールディングスの連結売上の4割以上を占めることから、単なるノンコア事業の切り離しとは違います。スピンアウト後の両社の経営状況や株主の動向等に引き続き注目が必要であると思われます。
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2019年9月の注目ディール<ヤフーがZOZOにTOBを実施>
9月12日、ヤフー(2019年10月1日よりZホールディングスに社名変更)がZOZOに対してTOBを実施する旨公表しました。本件は、ヤフーとZOZO間の業務・資本提携の一部であり、ヤフーがZOZOを連結子会社化するための手続きとして実施されます。買付予定数の上限は議決権比率が50.1%となる水準であり、本件TOBにより、ソフトバンクグループ傘下の上場子会社がまた1社増えることになります。
また、ZOZOの最大の広告塔でもあった前澤社長は、TOB公表日に退任。その保有株の大部分をTOBに応募します。前澤社長の抜けた影響が今度どのように効いてくるか注目は集まります。
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2019年8月の注目ディール<さくら総合リートに対する敵対的合併提案が決着>
本年5月より繰り広げられていたさくら総合リートに対する敵対的合併提案が、8月30日の投資主総会において、買収側のスターアジアグループに軍配が上がる形で決着しました。本件はJリート史上初の敵対的買収案件であり、約3ヶ月にわたり展開された泥仕合は、注目が集まりました。また本件では、リートの効果的・効率的運営のために設けられた諸制度が、健全な再編の障害になりうる可能性も垣間見られました。
今後リートに係る諸制度について、改めて検討する必要があると思われます。
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2019年7月の注目ディール<アサヒグループホールディングスが豪ビール会社を買収>
アサヒグループホールディングスは、アンハイザー・ブッシュ・インベブ社よりオーストラリア事業のカールトン&ユナイテッド・ブリュワリーズ社を買収すると公表しました。買収金額は1兆2000億円(160億豪ドル)であり、アサヒグループにとって過去最大の買収案件です。2016年以降、積極的に海外事業のM&Aを進めてきたアサヒグループは既に巨額ののれんをバランスシートに計上していますが、本件の実行により、これに数千億円単位の上乗せされることが予想されます。
アサヒグループは買収目的の一つとして、日欧豪の3極を核としたグローバルプラットフォームの構築を挙げています。その実現に向けて、どれだけのスピード感をもった対応がされるのか注目したいと思います。
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2019年6月の注目ディール<ビジョナリーホールディングスが優先株式を消却>
2000年代後半より業績不振に陥ったメガネスーパーは、2012年からアドバンテッジパートナーズ等の支援を受けて事業再生に取り組んできました。当初債務超過解消のために発行された優先株式は、2017年に同社が株式移転により設立したビジョナリーホールディングスに引き継がれていましたが、6月18日、ビジョナリーホールディングスは当該優先株式をすべて消却する旨の発表をしました。
優先株式の消却は「事業再生期」が終了したことを象徴するはずですが、この発表を受けて同社の株価は20%近くの暴落となります。優先株式消却のために複雑なストラクチャーが採用されたことに対する市場の評価は重く受け止める必要があると思われます。
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2019年5月の注目ディール<ソフトバンクによるヤフーの子会社化>
ヤフーは、通信事業会社のソフトバンクに対する第三者割当増資を実施するとともに、自己株式TOBを実施しました。自己株式TOBは実質的に親会社であるソフトバンクグループからの買付であるため、ヤフーはソフトバンクグループの子会社からソフトバンクの子会社へと移動することになります。
本件一連の取引は、投資事業会社であるソフトバンクグループから見れば、グループ内におけるヤフー株式の移動と5000億円にのぼるキャッシュの吸い上げであり、ソフトバンクグループの連結決算上の影響は大きくありません。一方で、新たにヤフーを子会社化するソフトバンクは連結売上を約1兆円、当期利益を約800憶円それぞれ増加させるため、上場会社であるソフトバンク株主に対する影響は無視できません。
加えて、ヤフーは上場子会社を2社有していることから、親子4世代の上場という状況も生まれました。ソフトバンクグループの資本構造は、コーポレート・ガバナンスの観点から注視すべきと思われます。
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2019年4月の注目ディール<ジェクシードに対する敵対的TOBが失敗>
香港のビーエムアイ ホスピタリティ サービシス(BMI)が2019年1月31日よりジェクシードに対して仕掛けていた敵対的TOBが失敗に終わりました。本件は小規模な案件ですが、敵対的買収事例の一つとして、その背景と経過を整理しておきたいと思います。
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2019年3月の注目ディール<エヌ・デーソフトウェアのMBOが成立>
エヌ・デーソフトウェアに対するマネジメント・バイアウト(MBO)の一環として実施されたTOBが3月25日に成立しました。経営陣による自社の買収であるMBOは、一般株主に不利益をもたらすリスクが高い取引形態であり、その取引の公正性の確保は重要な課題として認識されています。経産省も、2007年に策定したMBO指針の改定に向け、昨年末にMBOに係る論点を広く一般より求めるなど、その公正性確保のための検討を進めています。
同時期に進められていた廣済堂のMBOが不成立となったことから、その明暗を分けた要因は何処にあるかを見てみたいと思います。
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2019年2月の注目ディール<伊藤忠商事によるデサントに対する敵対的TOB>
伊藤忠商事が開始していたデサントに対するTOBは、同社の経営陣より反対の意見表明が2月7日になされたことにより、改めて敵対的TOBであることが明らかになりました。プレミアムの高さと買付予定数が少ないことからTOBの成立は確実と思われますが、デサントでは経営陣だけでなく、労組、従業員、更にはOB会までがTOBに反対を表明しています。このことは、「TOBの成立」が「TOBの成功」とは素直に言えないことを意味します。
ルノーと日産自動車、北陸コーポレーションと大王製紙のように、大株主が会社に対して思うような影響力を発揮できない例は他にも存在します。これらは「企業とはだれのものか」、「株主の権利はどのように守られるべきなのか」という問いを改めて提起するものと思われます。
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