2018年3月の注目ディール<アミタホールディングスの第三者割当増資に差止仮処分が決定>
産業廃棄物リサイクル事業を手掛けるアミタホールディングスによる第三者割当増資が、中止に追い込まれることとなりました。昨年の4月より同社の株式を買い進めて大株主となっていた同業の山崎砂利商店による申立てを受けて、裁判所が差止仮処分の決定をしたことが直接の原因です。
本件は、株主総会の意思決定に対して、司法が待ったをかけたという点で注目に値すると思われます。更に、市場で30%近い株式を取得して大株主となった株主に対する対応という観点から考えると、近年廃止するケースが増えてきている買収防衛策をめぐる動向に対して、何らかの影響があるかもしれないという点でも見過ごすことは出来ません。
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2018年2月の注目ディール<東栄リーファーラインがMBOに再挑戦>
2018年2月7日東栄リーファーラインは同社経営陣によるMBOが開始される旨公表しました。同社経営陣は昨年11月にもMBOを目的としたTOBを仕掛けて失敗したばかりですが、時間を開けずに再挑戦をすることとなりました。
1回目のMBOで600円であった公開買付価格は、今回は800円まで引き上げられまています。公開買付価格は一株当たり簿価純資産よりも依然低い水準であるものの、1回目のTOBの際に株式を買い進めた旧村上ファンドも今回のTOBには応募する意向ですので、一部懸念事項は残るものの、成立の可能性は高まったと言えるでしょう。
今回のMBOでは、1名の社外取締役を除く全取締役が買い手となっています。そのため、その社外取締役を支援し、株主の利益を保護するために設置される第三者委員会の役割は、通常以上に重要なものとなるはずです。公表資料からは、第三者委員会がどれほど慎重な検討をしたかについて伺い知ることは出来ませんでした。第三者委員会が、単に手続き要件を充足するために設置されたお飾りでないことを、どのように示していくかということは、今後の大きな課題であるものと考えられます。
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2018年1月の注目ディール<富士フィルホールディングスが米ゼロックスを子会社化>
2018年1月31日、富士フィルムホールディングスは。米ゼロックスの50.1%の株式を取得して子会社化することを発表しました。本件の特徴は、子会社である富士ゼロックスに自己株式の取得をさせることを通じて、キャッシュアウト無しで米ゼロックスを子会社化することにあります。税務メリットも享受できるというおまけもつきました。
但し、喜んでばかりもいられません。日本の富士ゼロックスとの経営統合を経て、米ゼロックスは世界最大規模のドキュメントソリューションカンパニーに生まれ変わりますが、世界の事務機器市場は既に飽和状態にあります。また、もの言う株主として知られる著名投資家のカール・アイカーン氏が、これまで米ゼロックス筆頭株主として様々な要求を突き付けてきていましたので、すんなりと合意を得られる保証はありません。低迷する売上を立て直し、年間1,200百万ドルのシナジーを実現させるためには、しっかりとしたガバナンス体制の構築が最重要課題だと思われます。
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2017年12月の注目ディール<りそなHDが関西アーバン銀行とみなと銀行対するTOBを開始>
りそなホールディングスは、2017年12月27日より三井住友銀行の子会社である関西アーバン銀行とみなと銀行に対してTOBを開始しました。これは、対象会社2行とりそなグループの近畿大阪銀行との経営統合プロセスの一環として実施されるものです。また、2017年に公表された国内In-In案件の中で最大規模のM&A案件となりました。
金融庁が推し進める地銀再編が進むと、中途半端な規模に留まる地銀・第二地銀は一層厳しい状況に晒されることになります。地銀・第二地銀各行の動きからは目を離すことが出来ません。
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2017年11月の注目ディール<東芝が6000億円の第三者割当増資を実施>
本年9月にメモリー事業を2兆円で売却することが決まった東芝は、更に6000億円の第三者割当増資を実施しました。元々2期連続の債務超過を回避するために実施したメモリー事業の売却が本年度末までに完了しないリスクに対する対策の位置づけです。
第三者割当増資の引受先となったのは海外の60のファンドです。その中には、旧村上ファンドの出身者が設立したエフィシモの他、エリオット、サードポイントなど「もの言う株主」が含まれており、東芝は上場廃止を回避する一方で新たな火種を抱えることとなりました。
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2017年10月の注目ディール<KKRが日立国際電気に対するTOBを再開>
本年8月9日に一端見送られていた日立国際電気に対するTOBが再開されることとなりました。しかしながら、KKRが提案している公開買付価格の2,900円は市場価格を下回る水準です。
これに対して日立国際電気の第三者委員会は少数株主にとって不利ではないと結論付け、同社取締役会は公開買付に対する賛同を表明することに加えて、株主に対してTOBへの応募を奨励することまで決議しました。こうした対応は、当初TOBのプレスリリースがなされた本年4月時点の判断やその後の見送りがなされた8月時点の判断と大きく異なります。
本件はストラクチャーが複雑なことも併せて、非常にわかり辛い取引となりました。TOBの成否には不透明感が漂います。
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2017年9月の注目ディール<東芝メモリの売却先が日韓米連合に決定>
債務超過からの脱出をかけて実施されていた東芝半導体メモリー事業の売却プロセスが一つの節目を迎えました。譲渡先はベインキャピタルを軸とする日米韓連合で、売却価格は2兆円です。本件入札は、海外への技術流出を懸念する政府や、競合への売却を認めないウエスタンデジタルなどへの対応が求められたことにより、通常の入札では見られない迷走を見せました。
また、ようやく譲渡契約締結までたどり着いたものの、これから乗り越えないといけないハードルはいくつも残っています。東芝メモリの経営権を巡る駆け引きの本当の山場は、これから始まるのかもしれません。
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2017年8月の注目ディール<ソフトバンク・ビジョン・ファンドによる矢継ぎ早の投資>
昨年、ソフトバンク・グループの孫正義会長がサウジアラビア王国パブリック・インベストメント・ファンドによる出資合意を取り付けたことを受けて設立されたソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)の勢いが止まりません。本年5月に930億米ドルの出資コミットメントを集めたばかりですが、7月の2件の投資に続いて、8月にはインドEマーケットフレイスのフリップカート(25億米ドル)、医療ベンチャーのロイヴァント・サイエンス(11億米ドル)、コーワーキングスペースのウイワーク(44億米ドル)の3社に対して多額の投資を実行しています。
また、SVFはソフトバンク・グループの連結対象となるため、連結子会社となる投資先の経営成績はソフトバンク・グループの決算に直接取り込まれます。
常識外れのベンチャーキャピタルであるSVFの動向とその投資の成果に注目が集まります。
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2017年7月の注目ディール<アルプス電気によるアルパインとの経営統合>
アルプス電気は、上場子会社であるアルパインとの株式交換による経営統合と共に、持株会社制に移行するグループ再編を発表しました。但し、アルパインが米国SECの規制適用を受けることが想定されるため、株式交換は1年以上も先の2018年12月に予定されるアルパインの臨時株主総会承認を経て、2019年1月に実施される予定です。
両社にとって重要市場である自動車業界では、自動運転、コネクテッド・カー、電気自動車など急速なスピードで開発競争が繰り広げられています。そのスピードについて行くためのグループ再編であるならば、他のストラクチャー採用の判断もあったかもしれません。
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2017年6月の注目ディール<タカタがKSSをスポンサーとして民事再生手続きを開始>
エアバックの欠陥問題によって長期にわたり経営危機に直面していたタカタが6月26日に民事再生手続開始の申立てを行いました。10年にわたるリコールの結果、負債総額は1兆7000億円まで膨んだと見られています。オーナー家が6割の株式を握るオーナー企業におけるガバナンス欠如が、問題解決を遅らせた一因なのではないかと思われます。
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