2019年1月の注目ディール<廣済堂がMBOを実施>
2019年1月17日、印刷業界の老舗である廣済堂は、同社の土井社長によるMBOの実施を発表しました。ベインキャピタルがスポンサーとなって実施されるTOBの買付価格は1株あたり610円で、プレミアムも前日の終値に対して44%と高く設定されました。しかしながら、市場価格はTOB価格を上回る水準で推移し、2月4日にはレノによる株式の買い集めも明らかになります。
廣済堂は2月12日に「MBOに伴うFAQ」を開示して、一般株主との対話に努めています。TOB期間の最終日である3月1日まで、目を離すことが出来ません。
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2018年12月の注目ディール<日立製作所がABBより送配電事業を買収>
2018年12月17日、日立製作所はスイスの重電大手ABBより、送配電や制御などの電力システム事業(パワーグリッド事業)を買収することを公表しました。ABBが分社化するパワーグリッド事業に対し、2020年前半を目途に日立製作所が80.1%の株式を取得します。ABBのパワーグリッド事業の売上規模は110億米ドルで、2017年まではABBの4つの事業セグメントの中で最大の事業でした。この事業を買収することにより、日立製作所の電力・エネルギー事業は一気に3.5倍規模に膨れ上がります。
クロスボーダーM&Aの経験が豊富な日立製作所も、本件ほどの大型案件は初めてです。2020年のDay1に向けて、今度具体的な調整と手続きが始まりますが、その中で、日立製作所が強力なリーダーシップを発揮してDay1プロジェクトを進めることが期待されます。
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2018年11月の注目ディール<東芝がLNG事業から撤退>
東芝は2018年11月8日、以前より最大1兆円の損失リスクが指摘されていた米国のLNG事業からの撤退を発表しました。具体的には、中国ガス大手のENNグループに対して、2019年3月までに東芝アメリカLNGコーポレーションの株式を15百万ドルで売却します。加えて、移管する契約に係る損失補てんのための一時金として、同社に821百万ドルを支払うことでも合意しました。
但し、本件成立までには、米国の対米外国投資委員会(CFIUS)の承認を取らなければならないという高いハードルがまだ残されています。折しも米中貿易戦争の真っただ中です。ルールよりもディールを重視するトランプ政権がどのような判断をするかも見ものです。
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2018年10月の注目ディール<イオングループがスーパーマーケット事業を再編>
イオングループは昨年12月発表の中期事業計画で明らかにしていた全国のスーパーマーケット事業の再編について、改めて具体的な手法を明らかにしました。再編は、8社の上場企業を含む14子会社を全国のエリア毎に経営統合するというものです。
エリア毎の再編における統合比率は今後決定される予定ですが、全ての統合当事会社の親会社であるイオンには、これが上場会社各社の少数株主にとって公正な比率となるようにすることが求められます。少数株主保護のための手続きが、形式的なものに留まらないよう期待したいと思います。
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2018年9月の注目ディール<ADAKAによる日本農薬の子会社化>
ADAKAが持分法適用関連会社の日本農薬に対してTOBと第三者割当増資を組み合わせて実施することにより、同社株式の所有比率を51%まで引き上げました。但し、買付予定数の上限設定によって応募株式の6割以上が買付の対象外となったことに加え、第三者割当増資の発行価額がTOB価格の74%程度の水準であったため、少数株主にとって不利益が生じているという見方がされています。
ADEKAにとって本件の目的は、農薬事業を同社のポートフォリオに取り込むことにより、ライフサイエンス事業をADEKAグループの第4の柱とすることです。この目的を早期に実現し、日本農薬の少数株主に対して還元していくことが、期待されます。
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2018年8月の注目ディール<KDDIと電源開発による共同TOB>
2018年8月8日、KDDIと電源開発は共同で新電力のエナリスに対して公開買付を実施することを発表しました。エナリスは既にKDDIの持分法適用関連会社であるため、本件共同TOBは、卸電力事業者である電源開発がKDDI・エナリスの小売電力事業に資本参加をして、新たな事業連合を構築するものだと言えます。
2016年の卸規制の撤廃と小売全面自由化によって急激に競争環境の変化が進む電力業界にあって、新たな事業展開をもくろむ電源開発の動向に注目が集まります。
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2018年7月の注目ディール<ヤフー株式に対する2件の公開買付>
2018年7月10日、ヤフー株式に対する2件のTOBが公表されました。1件は携帯事業会社であるソフトバンクが、アルタバ(旧米ヤフー)が所有する株式の一部を買取るためのTOBであり、もう1件はヤフーが親会社であるソフトバンクグループ(SBG)より自己株式を買取ることを目的とするTOBです。
アルタバがヤフー株式の売却方針を表明したことを受けた株価対策の意味もありますが、複雑ストラクチャーを採用した裏にはそれ以外の狙いも読み取ることが可能です。
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2018年6月の注目ディール<シャープが新株発行による自己株式取得を中止>
2018年6月29日、シャープは6月5日に公表したばかりの新株発行とA種種類株式の消却を中止すると発表しました。約2000億円規模の新株発行が公表からわずか1ヵ月の間に中止が決定されることは異例です。シャープは、米中貿易摩擦により市場環境が不安定となっていることを理由に挙げていますが、市場環境のせいにするのではなく、株主の理解が得られやすい経営環境を自ら作り出していくことが、同社に求められていることだと思われます。
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2018年5月の注目ディール<武田薬品工業がシャイアーを約6兆8000億円で買収>
2018年5月8日、武田薬品工業がアイルランドのバイオ医薬品メーカーであるシャイアーの買収で合意しました。売上高の単純合計は3兆4千億円を超え、売上規模世界第9位の製薬メーカーが誕生するとなります。買収総額は460億ポンド(約6兆8000億円)で、日本企業による海外企業M&Aとして過去最大です。
一方で、巨額買収に伴う財務に対する悪影響も大きな不安要素となっています。両社のマネジメントは、買収がもたらすメリットだけでなく、本件に伴うリスクについても、株主に対してきちんと説明していく必要があります。両社の株主総会における承認に向けて、説明責任がどのように果たされるのか、まずは注目したいと思います。
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2018年4月の注目ディール<マネックスグループがコインチェックを完全子会社化>
2018年4月6日、マネックスグループはコインチェックの全株式を取得して完全子会社化すると発表しました。コインチェックは大手仮想通貨業者の一角を占めていたものの、580億円の仮装通貨NEMの不正流出事件を起こして2度の経営改善命令を受けた上、いくつもの訴訟を抱えて経営の存続が危ぶまれていました。
コインチェックが抱えるリスクを呑み込んで、急拡大を見せる仮装通貨市場に参入したマネックスグループが、どのように「未来の金融の在り方をデザインし、新たな価値を提供(松本大同社社長)」していくのか、今後のかじ取りに注目が集まります。
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